著者
伊庭 幸人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.87, pp.43-50, 2011-06-13

与えられた確率分布のもとで「珍しい現象」を効率的にサンプリングする手法は,情報処理,非線形科学,ネットワーク理論,実験数学,ランダム系の統計物理など,さまざまな分野で有用である.マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC),とくにその一種であるマルチカノニカル法を用いると,着目する統計量の周辺確率がたとえば10^<-20>から10^<-200>に及ぶような極めて珍しい事象を実効的に偏りなくサンプリングすることが可能である.本稿の前半では,この手法を解説し,さまざまな応用例(ランダム行列・ランダムグラフの大偏差の計算,最適ネットワークの探索,カオス力学系における珍しい軌道の探索と確率計算,ランダムスピン系への応用など)を紹介する.後半では,脳科学や非線形科学のデータ解析で重要なサロゲート法への応用を提案し,簡単な実装例を示す.

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