著者
加藤 薫
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-13, 2012-01

日本語にあっては「文」の成立に占める「主語・目的語」のウェイトが英語等にくらべると軽い(省略,自動詞表現への傾斜,二重主語構文,ウナギ文等の存在)。日本語は,「主体」と「客体」を設定して「文」を組み立てようとする志向が希薄であると言える。いっぽうで,日本語には,敬語,多様な人称表現,授受益を表わす補助動詞,授受動詞「あげる・くれる」の使い分け,終助詞,あいづち等の,英語等においては存在しないか存在はしても日本語におけるよりずっと存在感の薄い表現が認められ,「文」の成立上重要な位置を占めている。これらの表現は,いずれも話者本人すなわち「自分」と「相手」との関係性をめぐるものである。 日英両言語の違いはウェイトの置かれる側面の違いとして理解できる。そして,構文上のウェイトの置かれ方の違いから見えてくるのは,世界を成り立たせるもの(「主体」)の設定・表現に拘りを見せる分析的な志向を持つ英語に対して,「自分」と関係を取り結ぶ「相手」との関係性の表現に拘りを見せる相手志向性を強く持つ日本語の姿である。なお,今回焦点を当てた日本語の姿と日本文化論で指摘されてきた「恥の文化」等の日本人の姿との関連については今後の課題としたい。

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