- 著者
-
岡本 聡
- 出版者
- 国際生命情報科学会
- 雑誌
- Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.88-93, 2012-03-01
「五大」とは、世に遍満し、万有を作る五つの元素。地水火風の「四大」に「空」を合わせたものをいう。「大」は梵語の意訳で、元素の意である。「空」を中心とする「四大」という死生観があった。昨年は、古典文学と「五大」という視点で、芭蕉を中心とした古典文学の中にどのように「五大」思想が取り込まれているのかという事を発表した。本発表では、前回の発表でふれられなかった『伊勢物語』の古注釈や、古今伝授、あるいは心敬の連歌論『ささめごと』などの記述を中心におきながら、それがテイク・ナット・ハンなど現代の仏教徒が書いたものといかに関わっているかという事について触れていきたい。前回も触れたが、米国オークリッジ国立研究所が行った放射性同位元素分析によれば、一年間で生有体を構成する原子の98%が入れ替わるという事である。この事から考えると、「四大」が「空」を中心に循環するという思想は理にかなったものという事になる。本発表では、「五大」思想を中心におき、それが日本の古典文学と現代に息づいている仏教とにいかに描かれているかという事を検討していきたい。