著者
小林 紀彦
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
no.31, pp.13-28, 1988-03-01
被引用文献数
3

VA菌根菌の一種,Gigaspora margarita胞子の発芽に影響を及ぼす要因について検討した。その要因としては温度,土壌pH,燐酸カリ濃度,農薬(殺菌剤,殺虫剤,除草剤),植物根の有無,胞子の表面殺菌,土壌殺菌等の影響を調べた。また野外における本菌の胞子形成やその発芽等の季節的な変化を観察した。1.本菌の胞子発芽を大きく阻害する要因は温度と農薬であった。胞子は15℃以下の温度では全く発芽せず,最適発芽温度は25-35℃であり,40℃でも35%の胞子が発芽した。また,農薬の影響は殺菌剤の影響が大きく,とくにベンレート,ダコニールはそれぞれ有効成分の0.05, 3.75ppmで20%以下の胞子発芽率となった。これに比べて殺虫剤は同様の発芽阻害率に達するには殺菌剤より10倍程度高い。除草剤は通常の使用濃度で発芽阻害がみられた。2.土壌pH(4-8),燐酸カリ濃度,0-250ppm,植物根の有無,胞子の表面殺菌,土壌の殺菌等の処理は胞子発芽にほとんどあるいは全く影響を及ぼさなかった。3.1986年から1987にかけての野外でのメダケ自生土壌における本胞子の胞子形成や胞子発芽の季節的な変化をみると,5月に採取した胞子は野外で充分熟成していたため6日以内で発芽したが,6-8月に採取した胞子は発芽後の空か内容の貧弱な胞子が多かった。9月末には新しい胞子が採取できたが,全く発芽しなかった。10月も同様であった。11月採取のものは僅かながら発芽し,12,2月となると発芽がさらによくなった。このことから野外でも胞子は休眠期間を有していることが明かとなった。4.上述のメダケ自生土壌にシロクローバ,アルファルファ,キュウリを栽培して,栽培後3,4,6,8,10,12月と定期的に胞子を採取して調べた結果,いずれの時期の胞子も全く発芽しなかった。しかしこれらの胞子も殺菌水中か土壌中である程度の期間保存すると胞子が成熟して発芽が促進された。

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