- 著者
-
福田 雅夫
- 出版者
- 日本土壌微生物学会
- 雑誌
- 土と微生物 (ISSN:09122184)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.2, pp.84-88, 2008
- 参考文献数
- 12
高残留性環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)の分解細菌Rhodococcus jostii RHA1株は,放線菌群に属するグラム陽性無芽胞桿菌で,妹尾らにより分離されたγ-HCH(リンデン)分解菌と同じ圃場に由来する。RHA1株においてPCB分解を触媒するビフェニル代謝酵素系では,(1)各分解ステップに複数の同種酵素(アイソザイム)が関与し,(2)5つのオペロンに分散した酵素遺伝子が巨大な線状プラスミドにコードされ,グラム陰性PCB分解菌とは異なるベクトルで分解酵素系を進化させてきたと想像される。RHA1株のゲノム解析はブリティシュコロンビア大学(UBC,カナダ)のグループとの共同研究で進められ,2005年に9.7メガベースの巨大ゲノムのシーケンスが完了し,上述のアイソザイムの分布や,多数のオキシゲナーゼ遺伝子をもつことなどが明らかになった。我々は農業環境技術研究所の小川(現・静岡大学)らとRHA1株の滅菌土壌中での増殖における遺伝子発現を,DNAマイクロアレイ技術を用いて調べ,滅菌土壌中で特異的に発現すると考えられる遺伝子を同定することに成功した。