著者
山根 隆宏
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.145-157, 2012

本研究の目的は,高機能広汎性発達障害(以下,HFPDD)児・者の母親が障害のある子どもを育てる経験を人生にいかに意味づけているのかを,新たな悲嘆理論の知見に基づき,子どもの障害の捉え方との関連から明らかにすることであった。HFPDD児・者をもつ母親19名に対して半構造化面接を行い,障害のある子どもをもつことの意味づけや子どもの障害の捉え方についての語りを得た。人生に対する子どもの障害の意味づけの特徴について,「自己の成長への価値づけ」「子どもへの感情」「障害の位置づけ」の3つの視点から分類を行ったところ,「成長・肯定型」「両価値型」「消極的肯定型」「自己親和型」「見切り型」「希薄型」の6つの類型とその特徴を明らかにした。また,子どもの障害の意味づけと障害の捉え方との関連からは,人生に子どもの障害を肯定的に位置づけるかどうかは,障害それ自体や障害を含めた子どもに対して社会的意義や価値を見出すことと,障害を認識する上での困難さや葛藤の強さが関連していると考えられた。

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