- 著者
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石井 芳樹
- 出版者
- 獨協医科大学
- 雑誌
- Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.3, pp.245-249, 2012-10-25
大規模災害発生時の健康障害として問題となるのは,災害そのものによる疾患の発生と災害による環境衛生の悪化によって発症する疾患,さらに災害によるライフラインの途絶や医薬供給の途絶による医療サポートの欠如などである (表1).呼吸器疾患領域においては,停電により慢性呼吸不全患者に対する在宅酸素療法や在宅呼吸器管理ができなくなる問題,被災による寒冷曝露や粉塵曝露による感冒や肺炎への罹患,口腔衛生状態悪化による誤嚥性肺炎の増加,集団避難所などにおける伝染性疾患の流行,常用薬の紛失や入手困難に伴う慢性疾患の増悪,ストレスに伴う慢性疾患の増悪,車内生活や狭い避難所生活による下肢静脈血栓と肺血栓塞栓症の発症,ヘドロ肺など災害に特有の呼吸器疾患,肺挫傷など外傷性呼吸器疾患など多彩な病態が挙げられる.本稿では,多様な災害関連の問題の中から在宅酸素療法患者への対応と災害時の粉塵曝露による呼吸器疾患の問題の2 つに焦点を当てて論じたい.