- 著者
-
後藤 嘉宏
- 出版者
- 社団法人情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.9, pp.364-371, 2012-09-01
- 参考文献数
- 43
東日本大震災はソーシャルメディア等新しいメディアの活躍の目立った災害であるとされる。他方,正常化の偏見仮説やオルポート&ポストマンの流言の公式等,災害情報学の従来の知見が当て嵌まる事例が多かったが,そのことへの新聞等での言及は少ない。これは新しいメディアに注目が集まったためであろう。その点から考えると,情報技術の進展が人々の意識や行動を変えるわけではないといえる。他方,インターネット革命が,相互監視的な情報環境に身を晒すことに馴れさせる等,我々の意識を根底から変える可能性そのものは否定できない。これは個人の自律性の確保の面で問題はあるが,防災の面からいうとメリットも大きい。今回の震災はソーシャルメディアと既存メディアの連携が注目された災害といわれるが,非常時と平時とをいかに分けるか,さらに連携のなかでどう棲み分けていくかという課題が前面に出た災害であるといえよう。