- 著者
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新井 良
獨協医科大学内科学(呼吸器・アレルギー)
- 雑誌
- Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.1, pp.T47-T56, 2013-03-25
肺癌患者,特に進行期患者の抗腫瘍免疫能の低下における樹状細胞の関与を検討するために,末梢血樹状細胞 (dendritic cell, DC) のサブセットとDC への脂質集積を検討した.肺癌症例から得られた末梢血より,モノクローナル抗体を結合させ,フローサイトメトリーを使用しDC のサブセットとその割合を分析した.また,分離したDC で,脂肪親和性蛍光色素(BODIPY 650/665)を使用し脂質集積を分析した.未治療肺癌患者において,健常人と比較し末梢血DC 数が有意に減少し,病期分類III+IV 期の患者群で骨髄系DC (myeloidDC, mDC) と形質細胞様DC (plasmacytoid DC, pDC) ともに有意に減少していた.BODIPY650/665 の蛍光強度でみたDC への脂質集積は,健常者と比較し,肺癌III+IV 期の症例群で有意に高値を示した.また,サブセット別の解析ではmDC において蛍光強度が高値を示し,脂質集積を認めた.細胞内へ蓄積された脂質はトリグリセリド (triglyceride, TG) であることが同定された.肺癌症例の末梢血中mDC では,健常者と比較し混合リンパ球反応 (mixed leukocyte reaction, MLR) の低下を認めた.肺癌患者では末梢血DC 数の明らかな減少とDC 細胞内へ多量の脂質集積による抗原提示細胞としての機能の低下から,抗腫瘍免疫能が抑制されているものと考えられた.