著者
黄 才榮 今井 幸充
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.39-50, 2009-04-01

本研究では,これまで日本の介護福祉研究ではあまり取り上げられなかった在日コリアン高齢者が在宅介護に求めるニーズの構造やその影響因子を明らかにすることを目的とした.調査対象は,関東地域にある在日コリアン高齢者のための3か所のデイサービス利用者および2か所の老人クラブ会員で,65歳以上の男女100人について,2008年4月6日から6月5日まで,訪問面接によるアンケート調査を実施した.調査結果の分析は,まずKJ法によって質的な検討を加えたのち,そこから得られた問題領域ごとに因子分析(抽出法は最尤法・回転法はプロマックス法)を行った.その結果,「文化配慮介護ニーズ」「自立支援介護ニーズ」「家族介護ニーズ」「居住介護ニーズ」の4領域8因子20項目が抽出された.また,因子分析で抽出された領域因子項目の合計得点間の相関関係を調べた.さらに,各領域因子項目の合計得点を従属変数とし,生活基本事項を独立変数とする重回帰分析を行った.その結果,在日コリアン高齢者の在宅介護ニーズは4領域8因子で構成され,「文化・家族・居住ニーズ」は日常生活ニーズとして有意な関連があり,とくに在日コリアン高齢者の介護意識と子どもとの関係が重要な因子であることが分かった.一方,「自立ニーズ」は,介護サービス利用の条件として,他のニーズと区別される傾向があり,住宅所有状況や介護保険制度の周知度が大きく影響していた.また,高い教育歴は,文化ニーズを高める一方で,家族ニーズを低くする要因であることが示された.

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