著者
田中 里尚
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.149-158, 2013-01

1921(大正10)年に創刊された『青木時報』は、長野県小県郡青木村の青年会員たちによって、1961(昭和36)年まで刊行され続けた地域誌である。これは、国内外の政治情勢を村内に知らしめるとともに、村内の諸問題を自立的に追及・解明する目的をもつ興味深い地域史料である。本研究ノートでは、『青木時報』における青年団運動が戦後においてとりあげた問題として、生活改善要求に注目し戦後経験の一つを描いた。すなわち、生活改善の希求は、単に経済的な次元の問題として捉えられたのではなく、若者が嫌悪する農村の因習性に対する改善欲求として現れた。そのため、表層的な経済的復興のみならず、生活文化を向上させるための内面的運動と相補的に結びついて進めることが目指された。その中心的センターとして誘致されたものが公民館であった。1950年代後半に、若者の流出が運動を解体させる危機に陥る中で、文化運動と生活改善運動は公民館を基点として雁行しながら進められた。最終的に、これら青年団運動のいくつかは公民館に吸収され、公民館運動の一つとして再編成された。この『青木時報』に描かれた経験は広域的地域における公民館運動史の前史として理解しうることを明らかにした。

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