- 著者
-
菊地 達夫
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.299-308, 2012
北海道は,明治以降,中央政府の主導によって,地域開拓政策,地域開発政策を展開してきた.戦前の地域開拓政策では,食料生産,地下資源開発を中心に産業立地を形成してきた.他方,製造業を中心とした工業立地では,道外大規模資本による鉄鋼業や製紙業の立地,道内小規模資本による食品加工業,木材加工業の立地がみられた,戦後では,太平洋ベルト地帯が形成されると,工業立地の分散のため,大規模な地域開発政策が計画された.北海道の場合,苫小牧東部地域開発計画が展開した.しかしながら,苫小牧東部地域開発計画をはじめとする道内工業団地は,思うような企業誘致ができなかったところが多い.そうした中,同時期に展開した石狩湾新港地域開発計画では,地域環境や地域資源の活用を重視した企業誘致を行い,一定の企業立地に達している.工業立地の場合,その中心は食品加工業や木材加工業であった.それに加え,近年,リサイクル系企業や環境・エネルギー系企業の立地が,急速にすすみつつある.また,東日本大震災の影響が,皮肉にも,それら企業立地の追い風になっている.第7期北海道総合開発計画,札幌臨海小樽・石狩地域の基本計画の内容では,誘致する企業立地の推進として,食品加工業,リサイクル系企業,環境・エネルギー系企業などの業種が示されている.いずれも,地域環境や地域資源の活用を重視する業種内容である.そのため,石狩湾新港地域は,それら企業立地の先駆的な役割を果たしている.