著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.165-170, 2015

本研究は,九州地方におけるアイヌ語系地名の残存の可能性について,福岡県の「志登」地名を事例として,若干の考察を行うものである。具体的には,先行研究の成果を述べ,地図,景観写真,文献資料の情報をもとにアイヌ語系地名の可能性について検証した。志登は,アイヌ語地名の可能性が高いと考えられる。その理由として,アイヌ語説の意味となる「峰」や「舌状丘陵」の双方の可能性を含む点を挙げることができる。加えて,志登一帯は,交易地であり,他地域からの文化的要素を流入しやすい地理的環境も有していた。他方,日本語説で考えた場合,志登は,「湿地」や「川の下流」の意味としても一致する。よって,福岡県の志登は,語源をアイヌ語説から日本語説に転化となった地名の可能性がある。
著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 = Bulletin of Northern Regions Research Center for Human Service Studies (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-6, 2003-10-01

本研究では,学校教育におけるアイヌ文化学習の実践をみながら,児童の反応をもとに学習意義を明らかにする。具体的には,アイヌ文化学習の実施状況について,先行研究に依拠しながら整理する。次に,小学校総合的な学習の時間における教育実践を取り上げ,アイヌ文化学習の導入の可能性について考察する。さらに,児童の反応を分析しながら,アイヌ文化学習の意義を浮き彫りとしたい。アイヌ文化学習の実践は,その居住が多い地域で芽生え,それ以降,行政機関(北海道教育委員会・札幌市教育委員会)の後押しがありながらも,なかなか浸透する姿勢がみえない。小学校の教育実践では,指導教諭の熱心な働きかけにより,多様な文化理解のアプローチができることを確認できた。また,それを受講した児童は,4つの観点で良好な評価を下した。
著者
菊地 達夫
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.299-308, 2012

北海道は,明治以降,中央政府の主導によって,地域開拓政策,地域開発政策を展開してきた.戦前の地域開拓政策では,食料生産,地下資源開発を中心に産業立地を形成してきた.他方,製造業を中心とした工業立地では,道外大規模資本による鉄鋼業や製紙業の立地,道内小規模資本による食品加工業,木材加工業の立地がみられた,戦後では,太平洋ベルト地帯が形成されると,工業立地の分散のため,大規模な地域開発政策が計画された.北海道の場合,苫小牧東部地域開発計画が展開した.しかしながら,苫小牧東部地域開発計画をはじめとする道内工業団地は,思うような企業誘致ができなかったところが多い.そうした中,同時期に展開した石狩湾新港地域開発計画では,地域環境や地域資源の活用を重視した企業誘致を行い,一定の企業立地に達している.工業立地の場合,その中心は食品加工業や木材加工業であった.それに加え,近年,リサイクル系企業や環境・エネルギー系企業の立地が,急速にすすみつつある.また,東日本大震災の影響が,皮肉にも,それら企業立地の追い風になっている.第7期北海道総合開発計画,札幌臨海小樽・石狩地域の基本計画の内容では,誘致する企業立地の推進として,食品加工業,リサイクル系企業,環境・エネルギー系企業などの業種が示されている.いずれも,地域環境や地域資源の活用を重視する業種内容である.そのため,石狩湾新港地域は,それら企業立地の先駆的な役割を果たしている.
著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2013

本稿は,人権問題の一つアイヌ民族の問題に着目しながら,中学校社会科・道徳における専門博物館資料を活用した単元開発を行うものである。その過程において,従来のアイヌ民族学習の動向,現行課程におけるアイヌ民族学習の導入(社会科)の可能性について,確認した。 それをふまえ,専門博物館資料を含む各種資料を用いながら,社会科(公民的分野)と道徳の時間について,授業内容を例示した。とりわけ,人権問題に関する内容は,専門博物館の活用(資料,構成の利用を含む)することで,従来の課題解決の一助になる可能性を示唆した。
著者
菊地 達夫
出版者
北翔大学
雑誌
生涯学習研究と実践 : 北海道浅井学園大学生涯学習研究所研究紀要 (ISSN:13463535)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.225-234, 2005-03-20

本研究では、伝統的建造物群の多様な活用を、福岡県吉井町の事例を通じて、若干の地理学的考察をする。吉井町は、重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、それを中核としたまちづくりをすすめている。具体的には、ひなまつり開催における広域的な地域活性化に加え、自治体、地域住民による独自の試みも展開している。これらの実態について、調査地域への現地観察、関係機関での資料収集、地域住民への聞き取り調査を統合して、論じたい。