- 著者
-
杉浦 慶一
- 出版者
- 日本経営分析学会
- 雑誌
- 年報経営分析研究 (ISSN:09110747)
- 巻号頁・発行日
- no.29, pp.58-69, 2013-03-31
2000年代後半より,日本の上場企業がメザニン・ファンドより資金調達を行うケースが登場した。企業の資金調達におけるメザニン・ファイナンスの認知度はまだ低いが,新たな資金調達手法として注目される。本論文では,メザニン・ファイナンスの特徴について述べた上で,その活用事例を取り上げて,案件の背景,資金調達のスキーム,資金使途,業績の推移,優先株式の償還の状況について分析し,メザニン・ファイナンスが果たした役割について明らかにした。具体的には,上場企業がメザニン・ファンドから資金調達を行った事例(東日本ハウス,ウェストホールディングス,イー・アクセス,日本板硝子,ラック)を分析の対象とし,調達した資金が借入金返済に充当されるケースと,設備投資などの成長投資に充当されるケースがある点を明らかにした。分析を行った事例は,一時的に財務体質が悪化しても,EBITDAは堅調に推移しており,順調に償還が進んでいる。普通株式への転換請求権が付されている案件でも,権利が行使されて普通株式の希薄化か生じた案件は皆無であることから,いずれもメザニン・ファイナンスの成功事例だと位置付けられる。