- 著者
-
古田 榮作
- 出版者
- 大手前大学・大手前短期大学
- 雑誌
- 大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.(25-76), 2012
前稿を受けて、『ダンマパダ』を"Legends of Buddhist"に拠りながら考察した。本稿では、中村元氏の著作から東洋の文化とその思惟方法を概観し、日本における読誦経典が依然として漢訳経典に拠っていることの呪術性を看過することができず、明治以降の西洋社会との交流で生まれた、インドでの経典に依拠すべきである。 『スッタニパータ』([P]Suttanipata『ブッダのことば』)『ウダーナヴァルガ』([P][S]Udanavarga『感興のことば』)は、『ダンマパダ』とともに小部に含まれる最古層の仏説に含まれるが、漢訳はなされず、『ダンマパダ』とは異なっている。 本稿では、『ダンマパダ』の「地獄の章」に関連の深いデーヴァダッタ、アジャータシャトルに関連のある若干の偈頌を取り上げ、アジャータシャトルとの関連で、『觀無量壽經』『阿彌陀經』に言及し、またアジャータシャトルの心的苦悩を現わす「阿闍世コンプレックス」にも言及した。結語として南伝経典の長部経典の「シンガーラへの教え」の家庭教育、夫婦の誓約に、自立と、家庭の存続を位置づけた。