著者
塚本 僚平
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.291-309, 2013-09-30

近年,消費の多様化や本物志向の進展が指摘されるなか,産地ブランドや地域ブランドへの注目が高まっている.一部の地場産業でも,産地の維持・発展の方策として,産地ブランドの構築が図られている.本稿では,2000年代以降,産地ブランドの構築に積極的に取り組んできた愛媛県の今治タオル産地をとりあげ,ブランドの構築が市場における優位性の獲得に繋がるか否か,ブランドの存在が産地維持要因の一つとなり得るかどうかについて検討した.今治タオル産地におけるブランド構築事業は,従来の問屋依存的で,有名ブランド品のOEM生産を軸とした企業体制からの脱却を意図したものであったが,産地の認知度の高まりを見る限り,当該事業は一定の成果を上げたといえる.また,問屋への依存度の低下や流通経路の拡大・多様化,リピーターの獲得といった現象も生じた.なお,今治産地では1980年代から海外生産や国内での一貫生産化,分業関係の見直し,外国人技能実習制度の利用といった生産面における戦略も展開された.それにより,分業構造に大幅な変化が生じていたが,これらの戦略は,製品の高品質化やコスト低減といった点でブランド構築事業との関連性を有していた.ただし,一部の企業では企業戦略と産地ブランドの特性が相容れないケースもあり,産地ブランドが全ての企業にとっての立地継続要因にはなり得ていないことも明らかになった.

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