著者
村本 邦子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.7-13, 2011

筆者は女性と子どもを対象とした開業臨床を実践してきた臨床心理士として、法と心理の協働の可能性を模索してきたが、2010年3月にトロントの治療型裁判所を見学する機会を得た。治療的司法とは80年代アメリカにおいて提唱された治療的法学に基づく司法を意味し、実践的には問題解決型裁判所や治療型裁判所を挙げることができる。カナダにおいても、1990年代後半、ドラッグコート、メンタルヘルスコート、先住民コート、DVコートという四種類の問題解決型裁判所が設立されたが、今回視察したのは、トロントのドラッグコートとメンタルヘルスコートである。いずれにおいても、専門の裁判官、検察官、カウンセラー、精神科医、ソーシャルワーカー、保護観察官など異なる分野の専門家が協働してチームとして取り組むこと、地域の公的機関や民間団体と連携して取り組むことが特徴であり、肯定的評価データが蓄積されつつある。今後は、正義の倫理とケアの倫理を相互補完させながら、法と心理の協働を含む学際的なアプローチによって新しい司法の形が模索される時代となっていくだろう。

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