著者
吉田 恵理
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.79-94, 2013-11

本論は、一九三四年に書かれた中原中也の「秋岸清涼居士」という未発表詩篇と、この時期に集中して書かれた<宮沢賢治>論との関連を考察するものである。本論はまず、<宮沢賢治>評価が急速に高まる没後の同時代状況に対し、中原がどのようにその作品を読むことで距離を取ろうとしたのかを明らかにする。「秋岸清涼居士」は、「原体剣舞連」からの引用があることで<宮沢賢治>と直接的に関連するのであるが、この詩篇の<道化調>といわれる言葉の身振りによってこそ、中原の<宮沢賢治>論と深い関わりを持つ。<道化調>の身振りと詩の一人称主格の位相の変化、そして<宮沢賢治>からの引用との関係を分析することで、この詩篇が構造として持つ名づけをめぐる問題を提示したい。

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