著者
北尾 隆心
出版者
智山勧学会
雑誌
智山學報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.33-44, 1989-03-31

「月輪観」は、単一で存立するのみでなく、五相成身観・阿字観・字輪観等においても用いられる観法としてよく知られており、密教における観法の中心である。それに対して「日輪」という用語は多くの密教経軌に説かれているものの、「日輪観」という観法についてはほとんど説かれていない。数少ない「日輪観」を説いた経典としては『無二平等経』や『理趣会普賢儀軌』等が挙げられる。しかし、日本密教における「日輪観」は、これら『無二平等経』や『理趣会普賢儀軌』等の「日輪観」を基盤として生じたのではなく、『菩提心論』における「日月輪観」こそが原点であったことが分かった。そして、特に興教大師はこの「日月輪観」を「即身成仏」するための観法として強調しておられたことが判明した。

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