- 著者
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大谷 憲司
- 出版者
- 日本人口学会
- 雑誌
- 人口学研究 (ISSN:03868311)
- 巻号頁・発行日
- no.15, pp.31-43, 1992-05-30
本稿は,現代日本における未婚者の性行動,結婚前の妊娠,女子の結婚確率,結婚後の避妊,ならびに最初の妊娠の確率といわゆるlocus of controlの関係を吟味している。1987年に厚生省人口問題研究所によって行われた第9次出産力調査のデータを用いて, logistic regressionおよびproportional hazards modelにより次のような予想が確認された。(1)18-22歳の未婚女子における外因帰属者(externals)は,内因帰属者(internals)よりも性交する可能性が高い。(2)内因帰属者である未婚女子の結婚確率は外因帰属者の結婚確率よりも高い。(3)最初の妊娠が生ずる前の避妊実行確率は内因帰属者である妻の方が外因帰属者よりも低い。(2)と(3)の結果は,内因帰属(internal locus of control)がより周到な計画的行動と密接に結びついているという一般的な期待と一見矛盾するように見えるが,それを説明する試みがなされた。また,われわれの期待とは反対に,既婚女子に関する限り彼女達が結婚前に妊娠をする確率はlocus of controlと何の関係も示さなかった。さらに,第1子妊娠確率についてもlocus of controlとの関係は見いだされなかった。これらの予想と結果のギャップを生みだした要因について考察がなされた。