- 著者
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大道 一弘
- 出版者
- 日本教授学習心理学会
- 雑誌
- 教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.1, pp.1-11, 2012
本論文の目的は,等周長問題(長方形の底辺を固定し,各辺の長さを同じに保ちつつ平行四辺形に変形した場合に,面積がどうなるかを問う課題)の解決における高さ判断の役割について検討することであった。従来,等周長問題においては,多くの者に誤りが見られることが指摘されてきたものの,高さ判断には問題がないものと仮定されてきた。しかし,大学生49名を対象とした3つの課題からなる実験の結果,(1)実験参加者全体の57%に高さ判断の誤りが見られること,(2)そのような者には視覚的判断といった直感的な判断を行っている者が多いこと,(3)面積,高さの両方に誤答した者でも,54%は補助線による高さの明確化によって面積判断も改善されること,(4)そのような者の31%は,補助線のない元の問題では面積,高さともに誤った判断に戻ってしまうことが示された。これらの結果から,等周長問題における高さ判断は多くの参加者にとって容易ではなく,高さ判断の誤りは等周長問題の誤りをもたらす要因の1つであると考察された。