著者
犬塚 美輪 大道 一弘 川島 一通
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.67-77, 2013

本研究では,論理的コミュニケーションの指導において,評価の指導的機能を重視し,体系的評価枠組みを提案した.さらに,評価と明示的フィードバック作成の支援システムを開発した.5人の大学教員に対する聞き取り調査と文献をもとに,6要素(分かりやすい表現,論理的な主張,批判的な検討,協調的な議論,ツールの使用,基本姿勢)から構成される評価枠組みを構築した.この評価枠組みに沿った評価の入力をもとにフィードバックを出力するシステムを開発し,その信頼性と妥当性の検討を試みた.2名の大学教員に評価システムを用いて大学生の作文(8編)を評価した.評定者間の級内相関および相関係数を算出したところ,中程度以上の相関が得られ,級内相関も「論理的な主張」以外では中程度以上の値であった.また,印象評定と評価システムを用いた評価の相関も中程度以上の値が得られた.
著者
中西 良文 大道 一弘 梅本 貴豊
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.199-211, 2018-09-30 (Released:2018-11-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,Pintrich, Marx, & Boyle (1993) で言及されている,自己効力感の2つの側面,すなわち,知識の正確性に対する自己効力感と知識再構築に対する自己効力感が,概念変化とどのように関連しているか検討した。概念変化を促すための教授ストラテジーとして,既有の概念に対峙する情報から提示する対決型ストラテジーと,合致する情報から提示する懐柔型ストラテジーを取り上げた。大学生・短期大学生135名を対象にいずれかの教授ストラテジーを用いて家畜概念の変化を促す教材を用いた検討を行った。その結果,まず2つの側面の自己効力感を測定する尺度が作成された。続いて,2つの教授ストラテジーと2つの側面の自己効力感によって家畜概念の判断の正答にどのような影響が見られるか検討したところ,対決型の教授ストラテジーによって概念変化がより促されている様子が見られたとともに,対決型の教授ストラテジーの場合において,知識再構築に対する自己効力感の得点が高く,知識の正確性に対する自己効力感の得点が低い場合により正答が導かれるという交互作用が見出された。そして,いずれの教授ストラテジーも,教授前から後にかけて,2つの側面の自己効力感を高めることが見出された。
著者
大道 一弘
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-11, 2012

本論文の目的は,等周長問題(長方形の底辺を固定し,各辺の長さを同じに保ちつつ平行四辺形に変形した場合に,面積がどうなるかを問う課題)の解決における高さ判断の役割について検討することであった。従来,等周長問題においては,多くの者に誤りが見られることが指摘されてきたものの,高さ判断には問題がないものと仮定されてきた。しかし,大学生49名を対象とした3つの課題からなる実験の結果,(1)実験参加者全体の57%に高さ判断の誤りが見られること,(2)そのような者には視覚的判断といった直感的な判断を行っている者が多いこと,(3)面積,高さの両方に誤答した者でも,54%は補助線による高さの明確化によって面積判断も改善されること,(4)そのような者の31%は,補助線のない元の問題では面積,高さともに誤った判断に戻ってしまうことが示された。これらの結果から,等周長問題における高さ判断は多くの参加者にとって容易ではなく,高さ判断の誤りは等周長問題の誤りをもたらす要因の1つであると考察された。