- 著者
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小平 麻衣子
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.4, pp.12-23, 2008
太宰治「女生徒」は、有明淑の日記を改変し、子どものような理想の女性と、本能だけを持ち思考能力のない現実の女性というイメージを作り上げ、女性の思考と書く行為を抑圧した。川端康成は、『新女苑』などの女性雑誌の投稿を指導し、それを助長した。これらの雑誌の記事によれば、戦時下に求められた女性の労働は、男性と同等とされながら、増減可能な調整弁である。文学においても、女性のテクストは、文学の危機的状況の際に呼び出され、文学領域を保存する媒介として利用されながら、文学の中心から排除されている。