- 著者
-
横濱 雄二
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.11, pp.2-13, 2007
昭和二七年から二九年にかけての菊田一夫『君の名は』のブームについて、映画のキャンペーンとロケの三事例を検討する。主人公二人の全国行脚は、それを演じた俳優たちの現前に注目すると、同時期に行われた昭和天皇の戦後巡幸と寓喩的関係にあることがわかる。俳優という人格を通じて作品の内外を連絡することで、典型的なメロドラマに見える『君の名は』にも、戦後日本を枠づけるという意味で国民国家を強化する側面が見出される。