著者
小川 豊生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.43-55, 2006

十三世紀の日本が体験した危機として蒙古襲来をあつかうことは、あまりに新味に欠けるというべきかもしれない。しかし、この国家的危機がひきおこした諸言説の根本的な変化については、それほど詳細に分析されているとは思えない。たとえば、北畠親房がその歴史叙述『神皇正統記』を超越神としての「国常立尊」から書き起こしていること、またその親房がその思想を度会家行をはじめとする伊勢神道にもとづいて形成していたことについては知られているものの、それまで言説化されることのなかった「超絶神」あるいは「世界を建立する神」が、いかなるプロセスで出現してくるのか、といった問題に関してはいまだ明らかにされていない。危機のなかでこそ惹起する、思考のある決定的な飛躍、この問題を十三世紀のテキストをもとに探究してみたい。

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