著者
伊豆 利彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1-10, 2003-11-10

「得能五郎の生活と意見」は、ドイツがフランスに侵入し、やがてパリが陥落する激動の時代に、現実におびえ、未来に不安を感じ、小市民的幸福にしがみつく小心な一知識人の〈現在〉を記録した。この現実の前に、これまでの思想と文学はまったく無力で空虚なものに思われた。今ではまったく自明に思われる歴史的な展望がないままに、ひたすら自己を見うしなって歴史の大波に押し流されていく知識人が、いかにして自己を回復し、文学の可能性を見出すか。この作品はいま、発表当時、また戦争直後とはちがった意味をもってよみがえってくる。

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CiNii 論文 -  よみがえる「得能五郎の生活と意見」:激動する歴史のただ中に〈現在〉を生きる(<特集>「一九四〇年代文学」は可能か) https://t.co/TjnVC2ea0c #CiNii 「日本は北部仏印に進駐し、日独伊三国同盟を結んでいた。大政翼賛会が発足して…」

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