著者
飯嶋 秀樹 山口 栄一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.691-694, 2014-10-18

2000 年代になって世界では日本だけが論文数を伸ばさなかった。「研究成果を論文発表することは、最も創造的な営みのひとつ」であるから、これは日本の創造性が衰退し始めた兆候と考えてよいだろう。本研究の目的は、論文数の減少がなぜ問題なのかを考えながら、日本の論文数が2000年代に伸びを失った原因を明らかにし、日本の科学研究が創造的な発展を遂げるための方策を探ることである。日本の論文数の推移を研究分野ごとに詳細に分析した結果、物理、物質科学、生化学・分子生物学などサイエンス型産業を支える基幹科学の論文数が2003年前後を境に急減し、一方、サイエンス型産業の一翼を担う化学の論文数が急減しなかったことを見出した。日本全体の論文数の停滞と、物理と化学の論文数の増減パターンの違いの原因を明らかにするために、論文数と博士課程学生数との相関性を比較検討した。日本全体の論文数と博士課程学生数とのあいだには非常に高い相関性がみられたが、物理では、学生数の変動が6年後の論文数と高い相関性があることを見出した。2000年代初頭に物理論文が急減した原因は、1990年代後半のサイエンス型産業(特に半導体)の衰退が引き金となって、物理専攻の博士課程学生数の減少を招き、数年後の若手研究者の減少という事態に至る連鎖的反応であることが分かった。

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