- 著者
-
杉山 央
- 出版者
- 東京女子医科大学
- 雑誌
- 東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.2, pp.44-49, 2015-04-25
心臓カテーテル治療の歴史は1966年Rashikindによる完全大血管転位の乳児に心房中隔裂開術を開発したことから始まるそれ以降、動脈管開存に対するカテーテル治療を始め多くのカテーテル治療法が開発されて臨床に用いられるようになってきている。こどものカテーテル治療の特徴として、(1)カテーテル治療のみで根治性がある手技、(2)手術との組み合わせで治療をする補助的な役割を担う手技、(3)心臓術後の遺残循環障害に対する治療とに分けられる。複雑心奇形の場合は複数回の手術が必要でありカテーテル治療のみでは根治できないため、しばしば心臓手術の前後で手術リスクを軽減させるために施行したり、手術回数を減らす目的で行われることが多い。,現在、日本では年間約4000件の小児・先天性心疾患に対するカテーテル治療が行われている。最も多いカテーテル治療はバルーン血管形成術で約30%である。対象血管は末梢肺動脈狭窄が最も多く、他、大動脈縮窄)、体静脈狭窄などがある。バルーン肺血管形成術の有効率は60〜70%前後と必ずしも高くない。バルーン血管形成術が無効な場合や困難な場合はステント留置術を考慮することになるが、日本での施行件数は年間50例程度と極めて少ない。バルーン弁形成術も頻度の高い治療手技であり、特にバルーン肺動脈弁形成術は第一選択の治療とされている。心房中隔欠損においてはその約70〜80%がカテーテル治療可能とされている。動脈管開存に関しては、未熟児PDAをのぞくと、ほぼカテーテルで治療可能であり、小さい動脈管にはコイル、やや太いPDAにはAmplatzer duct occluderが使用される。欧米では肺動脈弁に対する経皮的肺動脈弁留置術や僧帽弁閉鎖術に対するクリッピング術、心室中隔欠損に対するカテーテル閉鎖術など先進的な取り組みがなされており、わが国でも早期の導入が望まれる。