- 著者
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阿部 重夫
- 出版者
- 社団法人情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.1, pp.8-14, 2015-01-01
月刊誌FACTAは調査報道を目的として創刊8年余,100号を超えた。インターネットの普及で新聞や雑誌など紙メディアが退潮するなかで,報道の使命はスクープを純化すること,すなわち官僚機構や企業組織に依存する「御用聞きメディア」から脱出し,独自にニュースを創出することにあると考えた。しかし,憲法21条で保証されている「表現の自由」に基づく「知る権利」は,インターネットを基盤とした検索エンジンやSNS(交流サイト)の勃興で個人情報がビッグデータの源として日常的に広範囲に収集されている時代に,もはや時代遅れの理念でしかない。現に欧州などでは「知られない権利」論が台頭,調査報道の根幹を揺るがしかねなくなってきた。その二律背反にどう理論武装するか。