- 著者
-
谷川 恵一
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.11, pp.1-11, 1998
欧米の女たちは日本の女たちとは違ったしゃべり方をしているはずだという認識が芽生えるのは明治二〇年ごろになってからであり、以降、彼女たちが口にすべき日本語を求めての試行錯誤が繰り広げられていく。日本の女のものではないもうひとつの女のことばをつくり出そうとする試みが最初の成果をあげるのは、明治二一年から出された末松謙澄の『谷間の姫百合』というイギリスのラブロマンスの翻訳においてであった。