著者
會田 実
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.32-41, 1988

曾我十郎の恋人であった遊女「大磯の虎」、曾我兄弟死後、その菩提を弔い続け、大往生を遂げたその姿は、所謂、女人の理想像でもあった。しかし、一歩深く踏み込んで、その生を観ると、男女の性(さが)という煩悶と葛藤が、その一生に渦巻いていたことを知るのである。その最大の表出である「虎最期」の場面における彼女の哀れな行動を通して、武家社会の中で他律的生き方を余儀なくされていた女の、深層にある、男の側に対する意識を探ることができるのである。

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