著者
川津 貴司
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.191-204, 2008

「日本青年教師団」は、現職教員によって1939年8月に結成され、言論活動や講習会の開催などを通じて、「東亜協同体」建設という国家目標を実現するための教育革新運動を展開した。青年教師団は、1941年12月末に解散させられたが、その中核組織は、終戦後に最初の教員組合結成に加わっている。従来の教育史研究では、青年教師団の「時局便乗」的な性格が注目されてきた。それに対して本稿では、青年教師団運動の理論的指導者であった海後勝雄の存在に注目することで、戦時下の権力と同運動との関連を考察することを課題とした。精神主義や官僚主義への対抗的言説を展開していた海後は、国家的な政治革新にむけて教員を主体化する運動理論を展開し、青年教師団を革新派の国策ブレーンと結びつけることになった。それをうけた青年教師団は、結成当初の精神主義的な性格を脱して、教員の生活状況の改善を要求し、教員支配の階層的秩序を批判する運動を繰り広げた。

言及状況

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