著者
田中 実
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.91-101, 1986-02-10

『舞姫』の主人公は独白し、手記を書いたが、鴎外によって『舞姫』というテクストが成立した時、主人公は多層的意識構造に絡みとられている。母・法の精神・天方伯など彼が認識の光を当てず対象化しなかったことは鴎外終生の近代化批判のかたちに尾を引く問題でもある。それは太田が自己回復のための認識の光を当てるという手記のモチーフから逸脱し、<歌>を歌ってしまったことにも関わろう。そうした『舞姫』の弱点を等閑に付すことはできぬとともに、『舞姫』にはエリスという他者の言葉、あるいは成熟が表出し、それは異国人同志の男女の自我の深刻なすれ違いによる悲劇を齎した要因にもなり、太田は日本の近代化にアンビバレンツを起こさせていった。

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こんな論文どうですか? 多層的意識構造のなかの<劇作者> : 『舞姫』と作者(文学における虚構とは何か,文学の部,<特集>日本文学協会第40回大会報告)(田中 実),1986 https://t.co/kNFxQe0Zlk

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