著者
日下 力
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.25-34, 1984

本稿は、為朝像がいかなる過程をへて『保元物語』に定着されるに至ったかを見極めるべく、為朝に関する歴史史料類の再検討から始め、物語の表現、定着の時点に論及した。要は、為朝が地方(辺境)という闇を背負いつつ、都での瞬時の活躍という光の部分を共有したことの中に、英雄像としてふくらんでいく秘密があったのではないかとする点にある。その意味で、中世の時代相と不可分の関係において英雄像は誕生したと考える。

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