- 著者
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山田 雅子
- 出版者
- 一般社団法人日本色彩学会
- 雑誌
- 日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.3, pp.109-120, 2015-05-01
肌の記憶色は,実際よりも高明度であるとの研究があるが(児玉, 1975),自分自身の肌の場合も同様に,より明るい色がイメージされることが報告された(山田, 2010).本研究では特に自己の肌のイメージと実際との差異における個人差に注目し,当該ずれのパタンの抽出とその背景要因の分析を試みた.日本人女子学生82名を対象として実験調査を行った結果,化粧肌,素肌の何れの場合も,色相のずれの方向性と明度のずれの大小において個人差が抽出され,また,これらのずれの特徴は自身の理想や他者としての男女の肌のイメージの傾向としてもほぼ一貫して現れることが判明した.更に,こうした個人差が生じる背景要因を探ったところ,化粧時間や肌の悩みとの関係は不明瞭であったが,予想と実測の明度差が比較的小さい対象者は,ジェンダーに対して伝統的な価値観を持つことが明らかとなり,視覚的な接触時間以上に肌という対象の中心性の影響が推察された.