著者
山本 香
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
no.15, pp.127-139, 2015-02-24

コミュニティ間の往来の増加や、オンライン・コミュニティの活発化により、近代コミュニティは地理的近接性に関わらず人々の連帯を拡大している。そうしたコミュニティは、とくに難民による学校経営において大きな影響力を持つ。難民には身分を保証する行政や地域社会がないため、彼らによる学校経営に公共性という保障を与えるのは、独自に形成されたコミュニティに他ならない。それはシリア難民が経営する学校の事例でも確認できる。彼らのコミュニティは構成員の営みに伴って国境を越えて広がり、インターネットを通して繋がっている。また、学校内にも独特のコミュニティが形成されている。そこでは、とくに教師と生徒がモラルを通じて連携している。子どもはそこで紛争で負った傷や憎しみを表出させ、帰属意識を獲得するとともに心理的な安定を得ている。コミュニティへの帰属は、社会関係資本を得るだけでなく、構成員としての責任を負い、他者との相互依存関係を構築することを意味している。そのなかで難民は受動的な立場に留まらず、そこに活動の主体として固有の意義を見出している。コミュニティはそのような難民の営みを支え、強化する役割を果たしている。

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