著者
川瀬 貴也
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.217-241, 2015-09-30

植民地朝鮮(一九一〇-一九四五)において、植民地権力たる朝鮮総督府は、日本の諸宗教を導入する「内地延長主義」を採るのと同時に、朝鮮人の諸宗教やキリスト教宣教師などを「寺刹令」や「布教規則」などの様々な法令により管理しつつ、統治に役立たせる方向付けをしようとした。本稿は、一九一九年の「三・一独立運動」以降の、朝鮮人の諸団体の活動や出版活動への制限が緩和されたいわゆる「文化政治期」の朝鮮半島における朝鮮総督府の宗教政策および、日本仏教と朝鮮仏教の諸活動を概観する。具体的には(一)朝鮮総督府の宗教政策の基本コンセプトおよび各宗教への介入、(二)日本仏教の社会事業活動の実例および仏教関係の諸団体の活動、(三)朝鮮仏教内部での動向および朝鮮総督府や日本仏教といかなる「交渉」したのか、という問題を、いくつかの事例を挙げつつ考察する。

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