著者
田中 栄一
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 = Journal of Tokyo Women's Medical University (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.187-201, 2015-12

関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)治療は生物学的製剤の出現に伴いこの10年間で大きく進歩した。生物学的製剤は遺伝子組み換え技術を応用して、特定の標的分子を特異的に認識する抗体や受容体を改変した医薬品である。RAの病態を増悪させているtumor necrosis factorやinterleukin-6などの特定のサイトカインや、リンパ球活性化に関連する分子と結合し、その作用を減弱または消失させる働きを有する。本邦では、2003年にインフリキシマブが発売されて以来、RAに対する生物学的製剤としてはバイオシミラーの1製剤を含めると現在8種類の製剤が承認され使用可能である。いずれの生物学的製剤もRA患者の臨床症状の改善、骨関節破壊の進行防止、身体機能の改善などの作用を有し、より"寛解"が現実的な治療目標として認識されるようになった。しかしながら一方で、生物学的製剤には、感染増加などの安全性の問題、使用すべき適応となる患者の選択、高額な薬剤費、必ずしも大多数の患者が十分な効果を得ているわけではないこと、使用しているうちに当初は認められていた効果が減弱してくる二次的な効果減弱、いつまで継続的な投与が必要なのか、生物学的製剤の中止は可能かなどいくつかの問題点も残されており、今後、これらの問題点が明らかにされることが望まれる。

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