- 著者
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幾世 和将
浜口 智志
- 出版者
- 社団法人プラズマ・核融合学会
- 雑誌
- プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, no.12, pp.780-784, 2015-12-25
生きた生体組織に低温大気圧プラズマを照射すると,生体を取り囲む液体(細胞外液)中に,化学的に活性な分子やフリーラジカル等の反応活性種が生成され,それらと生体組織との相互作用により,生体内反応が誘起される.本稿では,液中の反応活性種の生成と輸送を解析するための数値シミュレーション法について解説する.気相中のプラズマにより生成された化学種は,液体に供給された後,各種の液中化学反応を通して,他の化学種へ変化し,輸送される.この過程を,データベース等に存在する液中化学反応式や反応速度等を用いて溶液中の各化学種の濃度の時間・空間分布の変化という形で,巨視的にモデル化することが可能である.こうして作成したモデルに基づく数値シミュレーションでは,プラズマ照射実験と異なり,特定の反応活性種のダイナミクスを詳細に解析することが可能である.本章では,数値シミュレーション例として,電子と水素原子正イオンを純水中に照射する際,溶液中に生成される各種化学種の生成・消滅・輸送を解析する.気相プラズマから供給される極めて反応性の高い活性種は,気液界面近傍の,厚さが100nm程度の「反応境界層」において消費され,液体内部にほとんど浸透しないことが,シミュレーションにより示される.