著者
田中 実
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.32-42, 2010-02-10

童話集『注文の多い料理店』の「序」文には、「わたくしは、これらのちいさいものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。」とある。この童話はその願いを実現しようとしたもの、それにはこの作品のパースペクティブを日常的遠近法で読むのでなく、その向こう、永劫の虚無を定点にして読まれなければならない。そのためには大森哲学の「知覚されたものがその人にとっての真実」であるという知見に立つ必要がある。この童話集がそれを要求しているというのが、私見である。また童話にもジャンル論が必要で、物語童話と小説童話とが峻別されなければならない。この作品は後者、プロットの末尾は作品の末尾ではない。深層批評が求められ、そこは絶対的なものの前で全てが相対の海に化すべく<仕掛け>られているのである。

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 1 favorites)

1 1 https://t.co/UL12GQJ10z https://t.co/ULj5gZX3qq

収集済み URL リスト