著者
森田 美里
出版者
日本フランス語教育学会
雑誌
Revue japonaise de didactique du français (ISSN:18805930)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.80-96, 2015

日仏コミュニケーションにおいて「舌打ち」(非肺気流子音の歯茎吸着音)は誤解を招く原因の一つである。本研究では,まず実例に基づき舌打ちを観察し,次に日本人学習者の知覚と評価に関するアンケート調査を行い,さらに日本人に対するフランス語教育での舌打ちの取り扱いに関する条件を考察する。一つ目の調査結果から,舌打ちが談話標識のように現れ,主に注意喚起機能を持っていることが明らかになった。また,二つ目のアンケート調査により,この音がフランス語文法の基礎が十分ではない,なおかつ外発的に動機づけられている学習者には「聞こえる」ことがわかった。これらの者が渡仏を控えている場合,日本語の舌打ちとフランス語のそれとが異なる用法を持っているということを教えることは有用であろう。一方,基礎力が十分あり,なおかつ内発的に動機づけられた学習者は,日本人フランス語教師も含め「聞こえていない」。よって,この知識は全ての学生に必要であるとは言えないが,教師はこの現象を把握し,機能および用法を知っておくべきである。

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