著者
米田 宏樹
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
no.25, pp.211-225, 2001-03

米国では1920年代までに、コミュニティにおける精神薄弱者のケアと監督の必要性が、彼らの隔離収容を唱えていた精神薄弱者施設長たちによって主張されるようになる。本稿では、早くからコミュニティ生活支援策を施設運営に導入したマサチューセッツ州二番目の州立施設、レンサム精神薄弱者使節と施設長ウォリスを検討の対象として、ウォリスが隔離収容の理論と相反する精神薄弱者のコミュニティ生活を容認し、積極的な支援策をとるようになる理由と背景について検討した。レンサム施設を対象とした理由は、この施設が精神薄弱者の「総収容化」政策が破綻する時期に設立・展開された施設であり、当時の政策破綻状況を把握する上で適切な対象であると考えられたからである。ウォリスが打ち出した仮退所の試みは新たに始められたものではなく、家庭への一時復帰や就職にともなう家庭への退所という形で、マサチューセッツ州の二つの施設で以前から行われていたものであった。施設を精神薄弱者の単なる収容先とみなす州議会に対し施設の教育機能を強調するために、彼は施設での訓練後にコミュニティで自活可能になったケースへの支援策を前面に出し始めたのである。施設で全ての精神薄弱者を収容できないとコミュニティで認識されたとき、総合的な機能を持つ施設が精神薄弱者にとって最良であると考えていたウォリスは、保護収容の次善の策として、施設同様に精神薄弱者が好ましい社会的反応を表出できる環境を仮退所受け入れ先の家庭と近隣に整えることを考えた。

言及状況

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こんな論文どうですか? <資料>1920年代までの米国マサチューセッツ州における「精神薄弱」者施設外処遇の成立 : レンサム施設長G.L.ウォリスのソーシャル・ワーカー導入過程を中心に(米田 宏樹),2001 … https://t.co/kQavSG6uiT

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