著者
波戸 愛美
出版者
お茶の水女子大学21世紀COEプログラムジェンダー研究のフロンティア
雑誌
F-GENSジャーナル
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-30, 2007-09

これまでのイスラム史における歴史研究では、女性に関するものは非常に少ない。なぜなら、女性の記述は通常の歴史史料には現れないためである。特に、記述の非常に稀な女奴隷に焦点を当てられることはほぼなかった。本稿は、その女奴隷に着目し、イスラム世界の女奴隷の姿の一端を明らかにすることを目的とする。史料として、他史料には記述の稀な女奴隷の仕事、売買、解放、死の豊富な記録が含まれるアラビア語の説話集『千夜一夜物語』Alf Layla wa Layla、ウラマー(知識人階層)の旅行記である『大旅行記』Tuhfa al-Nuzzar fi Ghara'ib al-Amsar wa Aja'ib al-Asfar、年代記『日録』al-Ta'liq を用いる。結論としては、まず女奴隷が非常に広範な範囲でイスラム社会に浸透し、多様な仕事を担っていたことがあげられる。特に女奴隷にしかできない仕事の存在は、奴隷が自由人には不可能な社会的職能を担い、性差を跨ぐボーダレスな役割を果たしていたことの現れであるといえよう。

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