著者
Mogi Kiyoo
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.815-829, 1963-03-10

地震は地殻の脆性破壊に伴う衝撃性波動であるとの立場から,種々の状態での破壊の発生特性を研究することによつて地震の起こり方を明らかにする手掛りが得られると考えられる.このような立場から,半無限体の内部力源による破壊の発生過程および破壊群の空間的分布状態を実験的に調べて地震の場合と比較考察した.実験における半無限媒体が,地震の場合の地殼に相当するとすれば,大きい地震の発生に関する一つの簡単な模型実験と見ることができる.半無限脆性体として,松脂を大型円形容器に熔融して後,徐々に凝固させたものをとり,内部力源として,小型電熱器を内蔵した球形あるいは楕円体形などの金属塊をとつて適当の深さに埋設し,金属塊の熱膨脹によつて力を作用させた.破壊は主として力源と媒質表面との間の部分に発生するが,それに伴う衝撃性弾性波群を振動計で連続記録した.実験の結果を要約すると次のとおりである.(1)媒質が均質一様な場合は,応力の増加とともに主破壊が突然発生し,それにひきつづいて多数の小破壊が続発する.これは地震の場合の余震発生によく似ている.さらに力源の深さが力源の大きさに比較してある程度大きい場合は,このような小破壊群の発生が比較的顕著でない.これも深発地震に余震が少ないことに相当するように見える.(2)楕円体型または円筒型力源の場合には,主破壊の際にあらわれる破砕域の分布は楕円形となる.ときとして,主破壊の出発点が破砕域の縁にくることが少なくない.また,大きい割れ目の一方だけが破砕して,他方はほとんど非破壊の状態で残る場合がある.これらの諸性質は破壊の基本的な特性に起因するものであるが,地震の余震域の分布と本震の震央あるいは地震断層との関係について知られている特徴と類似している点が少なくない.(3)媒質の構造が不均一な場合,あるいは力源の形が著しく不規則な場合は,破壊の頻度および大きさは,応力の増加と共に次第に増大する.これは,媒質内の応力が集中的に分布するために局部破壊が頻発することによると考えられる.この場介の破壊群の発生過程は群発地震などに類似している.以上,半無限体の内部力源による破壊の発生過程について調べたが,このような最も簡単な応力分布による破壊の発生が地震の起こり方といくつかの重要な点で類似していることは注目される.このような立場から,より定量的に研究を進めることによつて,地震の起こり方と媒質の構造および応力状態との関係を明らかにする手掛りが得られると考えられる.

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こんな論文どうですか? The Fracture of a Semi-infinite Body Caused by an Inner Stress Origin and its Re(Mogi Kiyoo),1963 http://id.CiNii.jp/DnZnM
こんな論文どうですか? The Fracture of a Semi-infinite Body Caused by an Inner Stress Origin and its Re(Mogi Kiyoo),1963 http://id.CiNii.jp/DnZnM

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