著者
Luca Stirpe
出版者
東京大学フィレンツェ教育研究センター
雑誌
Cultura Italo-Giapponese : Annali del Centro Studi e Ricerche dell'Università di Tokyo in Firenze
巻号頁・発行日
vol.3, pp.9-28, 2006-07

唐代末期から都市の形成がはじまり、市民層が成熟するにつれ、娯楽への欲求が高まった。そこで講談師が登場し、語りに使われる白話体による話本(huaben)が人々のあいだに広まった。おそらく官僚の退屈しのぎから生まれたとも考えられる話本によって「高尚」でない文学がはじめて生まれたのだった。なかでも好まれた題材はいわゆる法廷ものである。そこでは徳の高い判官が活躍し、超自然的な要素に頼りながら事件を解決していくという展開がよくみられ、謎解きという要素が存在しなかった。これには蛮族による支配という元代の社会不安(非理性的なるもの)を反映しているといってもよい。この時代から、世の不正を正す馬判事の人気が高まり、現代もなお人気の高いキャラクターとなっている。こうした中国の推理小説は、唐代から整備のはじまった刑法を啓蒙するよう(挿絵本を見よ)、罰の概念を伝える教育的役割を担っていた。

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