- 著者
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荘島(湧井) 幸子
- 出版者
- 京都大学大学院教育学研究科
- 雑誌
- 京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
- 巻号頁・発行日
- no.53, pp.206-219, 2007
近年、様々な学問領域において質的研究が隆盛を極めているが、質的研究の基本特徴はナラティヴターンといわれる認識論の変革を土台としている。客観主義の基盤になってきた素朴実在論への懐疑や観察者と観察対象の相互作用や社会的相互行為の重視、そして意味やナラティヴ(物語)の重視といった特徴がある。しかし、上記のような共通の関心を共有したとしても、質的研究法自体は全く異なる認識論的立場に立つ者に用いられていることもあるから、質的方法論には複数あるといえる。そこで、本稿では同じ語りのトランスクリプトにタイプの異なる2つの質的方法 を援用する試みを行う。それは、質的研究における認識論的反省(epistemological reflexivity)に基づいて行われる。