著者
船岡 正光 Funaoka Masamitsu
出版者
三重大學農學部附属演習林
雑誌
三重大学農学部演習林報告 (ISSN:05441005)
巻号頁・発行日
no.13, pp.p1-154, 1984-12

工業原料となりうるケミカルス取得を意図してリグニンを分解する場合,生成物組成は単純でなければならず,更に付加価値が高く用途が広いことも必要である。しかし,従来のリグニン分解手法は、リグニンの化学構造に開して数多くの重要な知見を提供してきたが,工業的手法としてみた場合,その分解生成物は極めて複雑である。これはリグニン化学構造の不規則性だけでなく, 従来法がいずれもある特定の結合型のみを特異的に開裂させるものではなく,広範な分解反応を引き起こすことに起因している。 リグニン構造の複雑性は,主として側鎖の結合様式の多様性に起因している。芳香核構造ほ比較的単純で,例えば針葉樹リグニンほグアイアシル核のみから成る3次元高分子とみなせる。本研究はリグニンの側鎖―芳香核間結合の特異的且つ定量的開裂反応を用いる,新しい分解手法に関するものである。 本法の特色は,従来法のように酸化あるいは還元手法によってリグニンを分解するのではなく,側鎖α位への芳香族化合物の導入(ジフェニルメタン型構造の形成)により側鎖―芳香核間結合の開裂エネルギーをを低下させ,その結果,芳香族置換反応の逆経絡を経て,リグニン芳香核を反応系に大過剰添加した他の芳香核と交換,遊離させる点にある。更に,「同一系でメトキシル基を脱メチル化させ,最終的に多価フェノールへと誘導することを目指してている。 本論文は総括を含め4編,10章から構成されているが、 結果を要約すると以下の如くである。 1 三フッ化ホウ素・フェノール系におけるリグニンモデル化合物の反応分解試薬として選定した<special>BF3</special>およぴフェノールの存在する系で,種々のモデル化合物を処理し、多価フェノール生成に関して本研究の意図する3段反応(側鎖のフェノール化,フェノールとの核変換およびメトキシル基の脱メチル化)の機作を明確化すると共に,種々のリグニソ構成単位の挙動についても考究した。 1.1側鎖のフェノール化反応側鎖のフェノール化には,従来から反応に関与することが指摘されてきたベンジルアルコールおよびベンジルエーテルだけでなく,共役二重結合,カルポニル基およびカルポキシル基も関与することを明らかにした。ベンジルアルコール,ベンジルエーテルおよび共役二重結合のフェノール化は極めて速やかであるが,カルポニル基およぴカルポキシル基の反応はその分子構造に影響され,例えば40℃,10分の衆件での反応率は,パニリンがほぼ100%であるのに対しω-(2-メトキシフェノキシ)アセトベラトロンでほ約50%と低く,またアセトグアイアコンではほば定量的に未反応物が回収された。従って,従来,リグニン中のフェノール化活性基がペンジルアルコールおよびエーテルとされていたのは,カルポニル基のフェーノール化が十分進行しない条件で反応が行われていたためである。また,フェノール化に伴う生成水ほ<special>BF3</special>の触媒活性を低下させるため,反応に際しては触媒の添加量に留意する必要があること,更にフェノール性水酸基のエーテル化はフェノール化反応に影響しないことも確認した。 1.2 フェノールとの核交換反応フェノール化によってジフェニルメタン型構造を形成したモデル化合物の芳香核は,同条件下で速やかにモノマーとして遊離すること,また側鎖―芳香核間結合の開裂以外,複雑な分解反応はほとんど生じないことを明らかにした。芳香核以外の生成物として,パニリンの反応液からρ-ロゾール酸を単離。同定し,またバニリルアルコールからは4,4′-ジヒドロキシジフェニルメタンおよびそのキノンメチド誘導体の生成を確認した。これらはいずれもフェノールル核のみから構成されており,また同条件における芳香核生成量がほぼ定量的であるところから,上記芳香核の遊離はフェノールとの核交換によると結論した。なお,芳香核遊離の速度ほ開裂中間体カチオンの安定化因子に支配されるだけでなく,フェノール性水酸基の欠如あるいはそのエーテル化によっても大きく低下すること(40℃での芳香核遊離の2次反応速度定数,<special>lmole・mole-1・min-1;アポシノール;70・6×10-2,パニリン;14.9×10-2,ベラトルムアルデヒド;1.9×10-2,バニリルアルコール;1.1×10-2),</special>核交換過程におけるフェノール側の反応位置は,そのρ-位がο-位よりも優先すること,更にρ-位結合核はο-位のそれより速やかに再核交換されることなどを明らかにした。 1.3 メトキシル基の脱メチル化反応グアイアシル核は100℃付近から脱メチル化され始め,処理温度あるいは時間と共に定量的にカテコールへと変換された。一方,シリンギル核はグアイアシル核より緩和な温度条件下で逐次脱メチル化され,最終的にとピロガロールへと誘導されるが ,100℃以上の条件下ではピロガロールの一部が重縮合等により,2次的に消費されることを認めた。 1.4 反応におよぼす三フ ッ化ホウ素およびフェノールの影響<special>BF3</special>は3段反応に触媒として関与しており,各反応は等モル量以下の存在で進行する。しかし,本反応系での単一処理による多価フェノール生成には,フェノール化生成水および初めから反応系に含まれる水分量に留意し,<special>H20/BF3</special>(モル比)<1に設定することが必要である。フェノールはカチオンの受容体として作用し,複雑な重縮合反応の抑制に寄与するだけでなく,反応溶媒として重要な役割りを演じている。すなわち,フェノール添加量を減少させると,<special>BF3<special>の活動度が増大して核交換速度は高められるけれども,試料および生成物の反応系への溶解性が大きく低下するため,均一な反応進行が困難になり,更に生成物の酸化あるいは脱メチル化速度の低下も引き起こすことになる。従って,反応の際にある程度過剰量のフェノールを添加することは必須である。 1.5 種々のリグニン構成単位の挙働ω-(2-メトキシフェノキシ)アセトベラトロンおよびω-(2-メトキシフェノキシ)アポシノール-4-メチルエーテルから,処理温度40℃で,すでにベラトロール(核交換生成物)生成量を上回るグアイアコール(β-アリールエーテル結合の開裂成分)が生成することを認め,β-アリールエーテル結合はフェノール化および核交換と同条件下で,極めて速やかに開裂することが明らかとなった。両モデルにおけるフェノール化速度の差およびグアイアコール生成量の比較により,β-アリールエーテル結合の開裂は側鎖α位の官能基に影響され 実際にはα位フェノール化後,核交換およぴβ-アリールエーテル結合開裂が平行して進行することな確認した。 また,5-5型結合は安定であり,ビフェニル構造単位では隣接水酸基間の脱水によるフラン環形成が主反応であること,核交換反応はジフェニルメタン型構造(DPM)に限定されず,ジフェニルエタン型構造(DPE),ジフェニルプロパン型構造(DPP),更には側鎖飽和型フェルプロパン型機造(PP)においても可能であり,その速度(DPM>DPE>DPP≫PP)は開裂中間体カチオンの安定性に支配されることを明らかにした。 1.6 側鎖の不均化開裂 苛酷な温度条件下(例えば180℃)において,モデル化合物の反応液から核交換および脱メチル化による生成物以外に,新たに不均化生成物としてアルキルフェノール類(エチルフェノール,プロピルフェノール等)を検出した。しかし,アルキルグアイアコールあるいはアルキルカテコールは認められず,上記アルキルフェノール類は核交換生成物の不均化開裂に基づくことが示された。 以上の諸結果より,リグニンからの多価フェノール生成に関して本研究の意図する3段反応は,本反応糸においていずれも効率よく進行することが明らかとなった。また,核交換反応はジフェエルメタン型構造に限定されず,理論的に全ての側鎖―芳香核間結合で可能であるため,事実上はビフェニル単位以外の芳香核が全てモノマーとして遊離し得ることを結論した。しかし,苛酷な温度条件下では,シリンギル核に基づくピロガロールの2次的変質が生じ,またC-C結合の不均化開裂も起こるので,その芳香核取得を目的とする場合,処理温度等反応条件の設定には注意しなければならない。 2 三フッ化ホウ素・フェノール系におけるリグニンの反応針葉樹および広葉樹リグニン試料の化学構造とその分解生成物について,モデル実験の結果を基に検討し,更に副生する残渻リグニンの性状を追求することによって,水反応系におけるリグニンの分解機構を考究した。また,工業リグニン試料の適正分解条件についても検討を加えた。 2.1針葉樹リグニンの反応 生成グアイアコールは130℃で最大値を示し,それ以上の温度条件下ではグアイアコールの脱メチル化生成物であるカテコールが増加した。しかし,芳香核の遊離は130℃以上で極めて緩慢となり,芳香核総生成量はジフェニルメタン型構造を形成し得る非縮合型単位に相当する値で頭打ちとなった。このことから,リグニン中での核交換反応はジフェニルメタン型構造のみに限定されると結給した。 2.2 広築棉リグニソの反応 グアイアシル単位の分解挙動は針葉樹リグニンと同様であった。一方,シリソギル単位に基づく生成物は,80℃でピロガロール-1,3-ジメチルエーテルが最大値を示し,処理温度と共にこその脱メチル化生成物へと変化したが,最終生成物であるピロガロールは100℃以上の条件下で不安定であるため,ごく微量にしか認められず,生成物総量は130℃を最大値としてそれ以上の温度条件下では大幡に減少した。しかし,例えばブナ材ジオキサングニンにおいて,理論収集すなわちジフェニルメタン型構造を形成し得る非縮合型単位の量が約0.36/<special>C9</special>と概算されたのに対し,130℃での収量は0.27/<special>C9</special>であり,また分解条件を操作することによって,更に生成量を理論値に近づけることが可能であるため,フェノール型製造の原料として広葉樹リグニンは針葉樹リグニンに比べ遜色がないものと結論した。 2.3 残渻リグニンの性状モデル実験の結果に反し,リグニンにおける核交換反応がジフェニルメタン型構造のみに限定された原因を明確化するため,異なる処理温度条件下で副生する残渻リグニンの性状を検討した。処理温度が高い残渻リグニン程その色は濃色化し,特に130℃以上では光沢を有する黒色を示すと共に,種々のリグニン親溶媒に対する溶解性が極端に低下した。更に,アルカリ溶液中でのUVスペクトルにおいても明瞭な赤色移動ほ認められず,そのIRスペクトルは分子量が小さいにもかかわらず全体にブロード化した。また,△Eiおよび△Er曲線から共役カルポニル基の存在が示唆されたが,IRスペクトルの<special>1600~1700cm-1</special>には明瞭な吸収は認められなかった。一方, その可視部吸光度は1N水酸化ナトリウム溶液処理によりて大きく低下し,特に処理温度130℃以上の残渻リグニンでほ,肉眼でも明らかに黒色から赤茶色へと変化した。同様の淡色化は水酸基をTMS基でプロックすることによっても観察された。以上の結果から,分子内に形成されたジフェニルメタン型構造ほ,核交換後速やかに酸化きれ,安定なキノンメナド構造となり,更に隣接単位と強固こ水素結合することが明らかとなった。この構造変化によってリグニンフラグメントは非常に剛直となり,試薬の攻撃が阻害される結果, 核交換反応ほ最も反応速度の速いジフェニルメタン型構造のみに限定されるものと結論した。 2.4 工業リグニンの分解 化学パルプ製造の排液から単離したクラフトリグニンおよびリグニンスルホン酸は化学構造が異なっているにもかかわらず,類似した反応生を有しており,いずれも処理温度130~150℃でそれらの芳香核をモノマーとして約10%収量で取得し得ることを確認した。混在する非リグニン物質は<special>BF3</special>の触媒活性を低下させるが,核交換反応にはほとんど影響なく,また液比(分解試薬/リグニン,重量比)を低下させると,不均化反応が大幅に抑制された。残渻リグニンの性状を酸化分解処理によって検討した結果,結合フェノールの大部分はその水酸基のο-位あるいほρ-位でリグニン側鎖と結合し,一部その水酸基を介してエーテル結合していることが示唆されたと同時に,芳香核の取得に関して150℃以上の処理温度ほ不必要であること,また処理温度が高い残渻リグニン程多くのキノン構造を有することを確認した。従って,残渻リグニンの利用法は主にキノン構造形成の有無によって大別され,フェノール活性の商いリグニンは,分解試薬としての再使用あるいはフェノール樹脂などの製造におけるフェノール源として活用し,一方多くのキノン構造を含有する試料は,その酸化能を生かして種々の酸化剤あるいは酸化還元樹脂等に応用することが得策であると結論できる。ln order to obtain low molecular phenols from lignin as industrial raw materials, the reactions should be controlled so that the resulting products are simple in structure and few in number. However, few degradation reactions achieve this result at present time. For example, products by the rydrogenolysis, which is a typical degradation method of lignin aimed at obtaining low molecular phenols, form an extremely complex mixture, including phenol, substituted phenol, hydrogenated phenol, and others. Thus, now only a few chemicals are being produced from lignin in commercial volume. The chermical structure of lignin is omplex, due to the various types of linkages between phenylpropane units, whereas the structure of the phenyl nucleus in each unit is relatively simple. For example, softwood lignin can be regarded as a three dimensional polymer consisting of only guaiacyl nucleus. Therefore, if the phenol nucleus alone can be released and demethylated, catechol will be the only possible product from softwood lignin. This investigation is in connection with a novel degradation method of lignin allowing the C-C linkages between side chains and phenyl nuclei to cleave selectively and quantitatively. The important characteristic of this method is not to use oxidation or reduction reaction, the conventional methods for the degradation of lignin, but to take advantage of the peculiarity of diphenylmethane type structures, that is, the methylene linkages in diphenylmethane type structures are more easily cleavecl than other C-C linkages in the presence of Lewis acid. This method consists of the following three reaction steps, by which the phenyl nucleus of lignin gives polyhydric phenol (namely, catechol in softwood lignin) as end product ; the formation of diphenylmethane type structures by the phenolation of side chains to be followed by the exchange of the phenyl nuclei of lignin for phenol, and the dernethylation of methoxyl group. l. Reactions of lignin model compounds in the presence of phenol and boron trifluoride Phenol and boron trifluoride were selected as degradation reagents <special>(P-BF3 reagent)</special>. Various reaction processes in the formation of polyhydric phenols from lignin were investigated using lignin model compounds.l.l Phenolation of lignin side chain The sites in side chains reactable with phenol were alcoholic hydroxl group, carbonyl group, carboxyl group, double bond, and ether linkage. The reactions of these sites with phenol under boron trifluoride catalization proceeded in milder condition than that of hydrochloric acid. The phenolation of benzyl alcohol benzyl ether and conjugated double bond proceeded very rapidly. On the other hand, that of carbonyl or carboxyl group was influenced by the motecular conformation around the functional group. That is, the reaction rates (%) with phenol at 40℃ for 10 min were roughly as follows: Vanillin 100 ; ω-(2-Methoxy phenoxy) acetoveratrone, 50 ; Acetoguaiacone, 1. However all these modelcompounds reacted with phenol quantitatively under higher reaction temperatures. These facts indicated that alcoholic hydroxyl group reacts with phenol in preference to carbonyl or carboxyl group, in the phenolation of lignin. The increase of combined phenol by recluction of lignin was due to the change of phenolation rate by the conversion of carbonyl group to lcohotic hydroxyl group. The phenolation rates of vanillin and veratraldehyde, so as those of vanillyl alcohol and veratryl alcohol, were equal, indicating that the phenolation in lignin side chain is not influenced by phenolic hydroxyl group1.1.2 Nuclear exchange reaction between the phenyl nucleus of lignin and phenol The phenyl nuclei were liberated quantitatively unrler mild condition from structural units capable of forming diphenylmethane type struclures by phenolation, namely frorn those carrying benzyl alcohol, benzyl ether, conjugated double bond or α-carbonyl group in side chain. The liberation of phenyl nucleus was a second-order reaction. The reaction rate increased by the presence of group capable of stabilizing the intermediate carbonium ion in the liberation of phenyl nucleus, that is, methyl or phenyl group in the center carbon of diphenylmethane type structure. And the rate decreased by the absence of phenolic hydroxyl group or etherification of the group. The rate constants at 40℃ <special>(mol・ mol-1・ min-1)</special> were 70.6 x </special>10-2</special> for apocynol, <special>14.9 x 10-2</special> for vanillin, <special>1.9 x 10-2</special> for veratraldehyde, and <special>1.1 x l0-2</special> for vanitlly alcohol. The rate of nuclear exchange reaction in syringyl unit was slower than that in guaiacyl unit, because the coordination of boron trifluoride to phenolic hydroxyl group was hindered by methoxyl groups.ρ-Rosolic acid was isolated from the reaction mixture of vanillin with <special>P-BF3</special> reagent and 4,4'-dihy-droxydiphenylmethane and the phenol dimer containing quinonemethide were identified from that of vanilly lalcohol. These results supported such assumption that the phenyl nucleus of lignin is exchanged for phenol by <special>P-BF3</special> reagent, and also, revealed that a part of diphenylmethane type structures is oxidized to give stable quinonemethide. During reaction process, ρ-position to phenolic hydroxyl group in phenol reacted with lignin in large preference to ο-position. The phenol nuclei combined at ρ-position to phenolic hydroxyl group in diphenylmethane type structures were re-nuclear-exchanged more rapidly than those at ο-position.1.3 Demethylation of methoxyl group Guaiacyl nucleus was demethylated above 100℃ to give catechol quantitatively. Syringyl nucleus was demethylated successively to give pyrogallol. But a part of pyrogallol condensed secondarily above 100℃. <special>化学記号</special>The rates of <special>S1 and S2</special> were faster than the demethylation of methoxyl group in guaiacyl nucleus.1.4 Roles of boron trifluoride and phenol on three reaction stepsBoron trifluoride acted as a catalyst in each reaction step. Although each of the step proceeded effectively in the presence of boron trifluoride of which numbers (moles) were less than those of reactive sites, the reaction system had to be controlled so as to have the mole ratio of the water to boron trifluoride less than one because boron trifluoride was nactivated by tlre water included in <special>P-F3</special> reagent or formed during the reactions. Phenol played an important role as the solvating medium, as well as the acceptor of cation. With the decrease of phenol in the reaction system, the rate of nuclear exchange reaction increased, but the demethylation of methoxyl group decreased and the oxidation of products was promoted, because of the increasing activity of boron trifluoride, and further, the homogeneous reaction became difficult because of the decrease of solubility of reactants and products in the reaction system. Thus, excess phenol was needed to effectively achieve the three reaction steps. 1.5 Behaviors of various lignin building units ß-Aryl ether linkage was rapidly cleaved under mild condition. The cleavage of ß-aryl ether linkage was a second-order reaction, and was influenced by the phenolation at α-position of side chain. Namely, the rate determining step of the cleavage of ß-aryl ether linkage was the phenolation at α-position, after which the cleavage of ß-aryl ether linkage and the nuclear exchange reaction occurred simultaneously. The 5-5 linkage was very stable. Most of adjacent hydroxyl groups in biphenyl unit were dehydrated to form a furan ring. The nuclear exchange reaction occurred also in diphenylethane, diphnylpropane, and further, phenylpropane unit carrying no reactive site for phenol, as well as in the diphenylmethane type structure, and the rate became faster with increasing stability of intermediate carbonium ion ; dephenylmethane > diphenylethane > diphenylpropane > phenylpropane. Theses results indicated that all phenyl nuclei of lignin, besides biphenyl units, can be liberated theoretically as a monomer through the nuclear exchange reaction.1.6 Disproportionation of C-C linkages From reaction mixtures of model compounds with <special>P-BF3</special> reagent under drastic conditions (for example, at 180℃ ), alkylphenols (ethylphenol, propylphenol etc.), besides proclucts through nuclear exchange reaction and demethylation of methoxyl group, were detected. However, alkylguaiacol and alkylcatechol were not detected, indicating that the formation of alkylphenols was due to the isproportionation of products formed by nuclear exchange reaction. The comparison of formed alkylphenols with their originating chemical structures led to the following results on the disproportionation of C-C linkages : The longer the distance between phenyl nuclei, the more the linkage between the phenryl nucleus and the side chain was cleaved easily, in contrast to the nuclear exchange reaction. The linkage between the two center carbons of diphenylethane type structure was most easily cleaved among all C-C linkages. In one unit, more than two phenyl nuclei were not eliminated at the same time.2. Reactions of lignin in the presence of phenol and boron trifluoride The relation between chemical structures of softwood and hardwood lignins and products from those by the treatment with <special>P-BF3</special> reagent, and the properties of residual lignins were investigated. And the degradation mechanism of lignin by <special>P-BF3</special> reagent was discussed, based on those results. Also, degradation conditions for industrial lignins were studied.2.1 Reaction of softwood ligninThe main product below 100℃ was guaiacol, the yield of which increased with rising temperature up to 130 ℃, above which guaiacol was demethylated rapidly to give catechol. The sum of both products increased only slightly above 130 ℃, and its maximum was in fair agreement with the number of uncondensed units capable of forming diphenylmethane type structures, indicating that the nuclear exchange reaction in lignin occurred only in diphenyhmethane type structuies, in contrast to the suggestion by model experiments that all plenyl nuclei of lignin besides biphenyl units can be liberated as a monomer.2.2 Reaction of hardwood lignin The degradation behavior of guaiacyl units was similar to that of softwood lignin. On products from syringyl units, the yield of pyrogallol-1,3-dimethyl ether increased with rising temperature up to 80℃, above which the yield decreased rapidly, accompanied by the formation of pyrogallol-1-methyl ether and pyrogallol, because the demethylation of rnethoxyl group began. However, the yield of pyrogallol above 100℃ was slight because of its secondary condensation, and consequently, the sum of products decreased rapidly above 130 ℃, although it increased up to 130℃.2.3 Properties of residual lignins Through investigating the properties of residual lignins formed at different reaction temperatures, the reason was discussed why the nuclear exchange reaction in lignin occurred only in diphenylmethane type structures. The diphenylmethane type structures formed in lignin were oxidized rapidly to give mesomeric quinonemethides, which formed hydrogen bonds to adjacent hydroxyl groups of phenol nuclei. This change of structure resulted in the rigidity of lignin fragments, which prevented subsequent reactions such as the phenolation at ß-or y-position of side chain to be followed by the exchange of the phenyl nucleus of lignin for phenol.2.4 Degradation of industrial lignins The phenyl nuclei of KP and SP lignins were liberated as monomer in about 10 % yields, for which the reaction temperature in the range of 130 to 150℃ was needed. Non-lignin substances contained in industrial lignins slightly slowed down the demethylation rate of methoxyl group, but had little effect on the liberation of phenyl nuclei. The utilization of residual lignins was divided roughly into two fields :The derivative formed below 100 ℃, which is much phenolic, is better used as an additive to plastics such as phenol resin, on the other hand, one above 100℃, which contains a number of quinones, as an oxidizing agent or redox resin.

言及状況

Twitter (1 users, 2 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 3フッ化ホウ素・フェノ-ル系におけるリグニンの反応に関する研究(船岡 正光ほか),1984 https://t.co/2AHjZYtA32 工業原料となりうるケミカルス取得を意図してリグニンを分解する場合,生成物組成は単純で…
こんな論文どうですか? 3フッ化ホウ素・フェノ-ル系におけるリグニンの反応に関する研究(船岡 正光ほか),1984 https://t.co/2AHjZYbqOU 工業原料となりうるケミカルス取得を意図してリグニンを分解する場合,生成物組成は単純で…

収集済み URL リスト