著者
本田 裕子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.116, pp.113-143, 2006-12
被引用文献数
2

2005年9月25日に行われたコウノトリの放鳥を住民がどのように捉えているのか、放鳥直後の住民による放鳥の意義を探るため、豊岡市全域住民を対象にアンケート調査を行った。回答者の抽出は、無作為抽出により20歳から79歳までの男女1000人とした。アンケートは郵送により2006年1月に行い、回収数は594通であった。アンケート調査の結果、回答者の多くが9月24日の放鳥を好意的に捉えていた。放鳥の賛否も、回答者の75%が賛成であった。放鳥に関する心配も、農業関連の心配(32%)よりも放鳥が成功するかどうか(73%)が上回っていた。また、放鳥によってコウノトリの捉え方が変化した割合は全体の62%を占め、放鳥によってコウノトリを好意的に捉える傾向が強くなった。コウノトリの放鳥に関し、新聞やテレビ報道が情報伝達手段として大きな役割を果たしており、コウノトリの放鳥を豊かな自然環境の象徴として伝えていることが多いことも関係していると考えられる。放鳥コウノトリを目撃した割合は全体の25%と多くはないが、放鳥賛成の理由に「もともと野生の鳥だから」が最も選ばれていた。そして、コウノトリは「地域の象徴やシンボル」、「豊かな自然環境の象徴」という捉え方が多く、「経済効果を生み出すもの」という利益に直結した捉え方は非常に少なかった。これは、コウノトリの放鳥を、「利益があるから」として評価しているわけではないことを示すとも考えられる。今までの野生復帰は、人里から離れたところで行われてきており、今回のコウノトリの放鳥は、人里で行われる初めてのケースである。今回、明らかになった住民によるコウノトリの放鳥の捉え方は、生活に直結するような利益というよりはむしろ環境問題や地域の象徴など金銭的とは必ずしもいえないメリットが関係しており、結果的に、それらのメリットによって、放鳥が住民にとって意義あるものとして受け入れられているといえる。

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