著者
園田 尚弘
出版者
長崎大学教養部
雑誌
長崎大学教養部創立30周年記念論文集(Bull. Faculty of Liberal Arts)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.147-156, 1995-03-27

ベンヤミンとヘッセルにとって二つの首都、パリとベルリンは生活のうえでも、作品のうえでも、決定的に重要な都市であった。ベンヤミンは未完の『パサージュ論』でパリととりくんだ。この作品は成立史的にみても、形式の面からみてもかれの作品を包括するものであった。ベンヤミンの作品の形式は神話的思惟と関係する敷居論とみなすことができる。『パサージュ論』の全体構想にも、遊歩者という個別のテーマにも敷居論の性質がみうけられる。ヘッセルは『ベルリン散歩』のなかでかれの遊歩論を展開している。ベルリンは遊歩に不適な都市であるが、ヘッセルは人間愛からこの術を学ばねばならないと主張する。偉大な「敷居学者」と評された著者の作品には、敷居に対する感覚が浸透している。

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