- 著者
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根岸 純
- 出版者
- 明治大学文芸研究会
- 雑誌
- 文芸研究 (ISSN:03895882)
- 巻号頁・発行日
- no.63, pp.p112-97, 1990-02
『ライン河』Le Rhinが「或る友への手紙」という副題を付して上梓されたのは、1842年1月12日のことであり、この初版は「序文」、25通の「手紙」、そして「結び」という構成になっている。今日我々が読むことのできる版は、この初版に未発表の「手紙」14通を加えて1845年に刊行された再版である。ユゴーは終生の愛人ジュリエット・ドルーエと、ヴァレンヌまでの小旅行(1838年)、ライン河流域を旅程に含む二度の旅行(1839年、1840年)を行っており、書簡体紀行文『ライン河』はこれら三回の旅行から生まれた。1838年の旅行では、ドイツに入るどころかヴァレンヌまでにしか行ってないのだが、このわずか10日間の旅行は、恐らくユゴーが『ライン河』の構想を初めて抱いたと考えられる点で重要である。